2025/04/02 00:22

先日悲しい事件がありました。


自宅で凍死していた父の遺体を放置したとして、38歳の長男が2025年3月25日に死体遺棄の容疑で逮捕されました(栃木県警小山署)。同年1月頃に父(68歳)の自宅を訪問した際、父が凍死していたことに気づいていたものの「葬儀のお金が無かったので届け出なかった」と供述されているとのことです。


◎お葬式は無理に行わなくても大丈夫です。ただし、


日本では、お葬式を行わなくても法律的に問題はありません。葬儀は義務ではなく、個人の自由や遺族の意向によって決められるものです。ただし、亡くなった方の遺体を適切に処理することは法律で定められています「墓地、埋葬等に関する法律」)。

お葬式をしない場合、火葬のみを行うシンプルな形を選ぶ人も増えています(直葬[ちょくそう])。これらは費用や手間を抑えたい場合、または故人や遺族の希望によるものです。お葬式を省略するかどうかは、宗教観、経済的状況、家族の考え方次第なので、「やらなくてもいい」と一概には言えませんが、やらない選択肢も十分にあり得ます。


◎亡くなった方の遺体は適切に処理しなくてはなりません。


日本で亡くなった方の遺体を適切に処理する義務を定めている法律は、主に「墓地、埋葬等に関する法律」(通称:墓埋法、1948年制定、法律第48号)です。この法律は、遺体の埋葬や火葬、墓地の管理などに関するルールを定めており、公衆衛生や社会秩序を保つことを目的としています。以下に、関連する主要な条文とその解釈について説明します。


1. 墓埋法第3条(火葬・埋葬のタイミング)

墓埋法第3条では、「埋葬又は火葬は、他の法律に別段の定がある場合を除く外、死体の死後又は死産児の死産後24時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない」とされています。

これは遺体の処理方法として「埋葬」または「火葬」が想定されており、それ以外の方法(例えば遺体を放置する、廃棄するなど)は認められていないことを間接的に示しています。また、24時間経過後に処理を行うことが前提とされています。これは、死亡の確認を確実に行い、誤った処理を防ぐためです。ただし、感染症などの特例では例外が認められることがあります。


2. 墓埋法第10条(処理義務者)

墓埋法第10条では、「埋葬又は火葬は、死亡者の同居の親族その他その死亡者と生前関係が深かつた者が行うことを常とする。ただし、その地方の慣習上これらの者以外の者がこれを行うべき場合には、その者がこれを行う。」とされています。これは遺体の処理が「埋葬」または「火葬」の形で行われるべきことが前提とされており、誰かがその責任を負うことが示されています。処理義務者については以下のように解釈されます。


<優先順位1位:同居の親族>

通常は「同居の親族」(配偶者、子供、親など)が遺体の埋葬や火葬を行う義務を負います。


<優先順位2位:その他の関係者>

同居親族がいない場合や、生前に深い関係があった人(例えば親しい友人や事実婚のパートナー)が処理を行うことも認められます。


<優先順位3位:慣習による例外>

地域の慣習で親族以外(例えば自治会宗教団体)が処理を行うべき場合は、その者が担当します。


3. 墓埋法第11条(許可制)

墓埋法第11条では、「埋葬又は火葬は、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可がなければ、これを行つてはならない。」とされています。これは遺体の処理は「埋葬」または「火葬」に限定され、かつ市町村長の許可(「火葬許可証」・「埋葬許可証」)が必要であることを示しています。これにより、許可されない方法(例えば自宅で勝手に焼却する、自然に放置するなど)が事実上排除されます。


4. 墓埋法第15条(自治体の責任)

墓埋法第15条では、「埋葬又は火葬を行う者がないとき、又は明らかでないときは、死亡地の市町村長がこれを行わなければならない。」とされています。これは誰も処理しない場合でも、自治体が「埋葬」または「火葬」を行う義務を負うため、遺体を処理しない選択肢は存在しないことが明確です。


◎遺体処理義務者が義務を果たさない場合はそれだけで罪になる?


「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)第10条では、同居親族が遺体の埋葬や火葬を行うのが慣習的な義務とされていますが、これを怠った場合に直接的な罰則は規定されていません。つまり、「義務を果たさない」ことだけ刑事罰(懲役や罰金)が発生するわけではありません。単に「私はやりません」と拒否するだけでは、法律上ただちに罪に問われることはないのです。

しかし、遺体を放置したり不適切に扱ったりすると、別の法律である「刑法第190条(死体遺棄罪)」が適用される可能性があります。


<刑法第190条(死体遺棄罪)>

刑法第190条(死体遺棄罪)では、「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。」とされています。死体遺棄罪が成立するのは、遺体を「遺棄」したり「不適切に扱う」行為があった場合です。例えば、以下のようなケースがそれに該当します。


・遺体を自宅に放置し続け、腐敗が進むような状態にする。

・遺体をゴミとして捨てる、隠す、埋めるなどの行為。


同居親族が「義務を果たさない」ことと、「遺体を遺棄する」ことは別です。義務を果たさないだけであれば罪になりませんが、遺体を放置して「遺棄」とみなされる状況を作り出せば、死体遺棄罪に問われる可能性が出てきます。



◎遺体処理義務者が何らかの理由で義務を果たせない場合はどうすれば良い?


自治体に連絡しましょう。

遺体処理義務者が何らかの理由で義務を果たせない場合、自治体に連絡して遺体の処理を依頼すれば、遺体を放置したり不適切に扱ったりする状況にはなりません。この場合、墓埋法第15条に基づき市町村長が処理を行うので、遺棄行為には該当せず、刑法第190条(死体遺棄罪)の適用を免れます。手順としては以下の通りです。


手順1)死亡が確認されたら、死亡届を役所に提出(医師の死亡診断書が必要)。

手順2)自治体に「親族が処理できないので対応してほしい」と連絡。

手順3)自治体が火葬手配を行い、無縁仏として処理。


この場合、遺体処理義務者は義務を果たしていないものの、遺体が適切に処理されるため、法的責任は生じません。


今回の栃木県で起こった悲しい事件も、このように自治体に連絡をしていれば、何ら罪に問われることはなかったということです。


◎この場合の遺体の処理に関わる費用はどうなる?


自治体が遺体を処理した場合、墓埋法第9条に基づき、埋葬や火葬の費用は「死亡者の遺留した財産」から支払われるのが原則です。遺産がない場合、費用は「埋葬若しくは火葬をすべき者」(つまり同居親族など)に請求される可能性があります。同居親族が義務を果たさなかったとしても、経済的責任から完全に逃れられるとは限らず、自治体から後で請求を受けるケースがあります。


<墓埋法第9条(原文)>

墓埋法第9条では、「埋葬又は火葬に要する費用は、これを執行する者が死亡者の遺留した財産で支弁することができるときは、その財産から支弁しなければならない。ただし、その財産が埋葬若しくは火葬をすべき者の扶養に欠くことができないものであるときは、この限りでない。前項に規定する場合を除くほか、埋葬又は火葬に要する費用は、当該埋葬又は火葬をすべき者が負担しなければならない。」とされています。これは「誰が費用を払うか」を優先順位付きで定めたもので、まず遺産、次に「すべき者」という順番になっています。

ただし、法律上の義務があっても、現実には経済的状況や関係者の意思で負担が回避される場合があり、自治体が最終的なセーフティネットとして機能します。


◎葬祭関連費用を一部補填する制度があります!


今回の火葬のみの場合も含む葬祭関連費用を一部補填する制度がありますの。以下が主なものになります。


1. 国民健康保険の葬祭費

被保険者が亡くなった場合、葬祭を行った人(喪主など)に「葬祭費」が支給されます。

金額は自治体により異なりますが、3万円~7万円程度(例: 東京都23区では一律7万円)。

申請方法は死亡日から2年以内に、故人が加入していた国民健康保険の窓口(市役所など)に申請。必要な書類は死亡届の写しや葬祭費の領収書など。


2. 後期高齢者医療制度の葬祭費

75歳以上の人が加入する後期高齢者医療制度でも、同様に葬祭費が支給されます。

金額は国民健康保険と同様、自治体で異なり3万円~7万円程度。

申請方法も国民健康保険と同様、市区町村の窓口で手続き。


3. 生活保護受給者の場合

生活保護を受けていた人が亡くなった場合、「葬祭扶助」が適用され、公費で賄われます。

金額は自治体により上限が定められており、約20万円程度。

申請方法は事前に申請が必要で、葬儀社と自治体が連携して手配することが多い。


4. 自治体独自の助成

一部の自治体では、住民向けに火葬料を無料にしたり、低額に抑えたりする取り組みがあります。

また、非課税世帯や低所得者向けに独自の補助金を設けている自治体もまれにあります(要確認)。


*注意点*

<還付のタイミング>

葬祭費は後から支給されるため、火葬時に一旦全額を自分で支払う必要があります。


<民営施設の場合>

公営と違い補填や助成の対象外の場合があるため、事前に確認しておく必要があります。


<情報収集>

補填や助成の詳細は自治体や施設ごとに異なるので、事前に市区町村のウェブサイトや窓口で確認するのが確実です。




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