ZAYUはどのようにしてできたのでしょう。私たちの想いを届けたく、企画から、開発・製造過程の様々な背景をご紹介いたします。
家族のあり方や価値観の大きな変化、それに伴う弔いスタイルの多様化という社会背景のなかで、「本当にほしい供養品があるだろうか」というのがZAYUプロジェクト開始の動機でした。株式会社キリフダでは実は長年、霊園や墓地に関する情報サイトや冠婚葬祭に関する情報サイトを運営しているのですが、とくにこの10年は、従来型の墓地に対する需要が大きく変化していくのをまざまざと感じる時間でした。
しかし、ふと冷静に市場を見てみると、提供されているサービスが多様化し、選択肢も大きく増えているとはいえ、企画・開発チームのメンバー自身が「欲しい」と思える供養品はあまり無いことに気づきました。同時に、選択肢の増えた市場の中で「生活者は混乱している」ことにも気づきました。弔いは宗教や伝統的慣習に即して行われがちなものですが、冒頭に触れた「家族のあり方や価値観の大きな変化」を受け止めるだけの思想や考え方、弔いのあり方のビジョンが示されていないのです。
市場調査や消費者調査も慎重に重ね、葬送の近現代史も研究し、開発メンバー全員で「死に方」と「弔い方」とに向き合い議論を重ねて「私達の提案」である「自宅納骨」の考えを確立していきました。
ZAYUは洗練されたデザインに囲まれて生活している人々の審美眼に適うものを作る、つまり骨壺の見た目の解決をすることと、弔いの方法の新しいコンセプト「自宅納骨」を伝えていくことで供養に関する不安や悩みを少しでも解決すること、この2つを理念に成立しています。
ZAYU外壺の上蓋部分と、中壺は木製です。ふるさとの自然に包まれる、目を閉じて祈るときのそんなイメージを大切にしたいので日本産木材を使用することは重要視していました。しかし銘木の世界、しかも国産となると上を見ればきりのない高級品の世界です。緊密で木肌が美しく、硬く小さな加工に適したもの。切削や漆の過程の伝統工芸士とも相談し、外壺にはより丈夫で狂いの少ない水目桜を、遺骨を直接入れる中壺には温かみのある風合いの樺桜を使用することにいたしました。
水目桜も樺桜も実はサクラではなく、カバノキに属するものです。水目桜は非常にきめ細かな木目が美しいのが特徴で、硬さと弾力性を兼ね備えています。梓弓、という古来より神事に使われる弓がありますが、この梓弓の梓とは水目桜のことをさします。正倉院に収められている梓弓もこの水目桜であることがわかっています。
樺桜の仲間はなめらかで上品な木肌が特徴で、建築内装部材からピアノのハンマーなど細かな加工にも優れている素材です。日本産で上等のものは入手が難しくなってきている素材です。切削は、最新鋭の3D技術と、経験と勘の結集した伝統技術で寺院建築の細かい装飾物や各地の文化財の復元なども手掛ける富山県高岡の工房が担当しています。
ZAYU商品「総漆」タイプの木製の部分には漆塗りを施しています。漆は朱や黒のイメージがあると思いますが、ZAYUの漆は着色していない生漆を贅沢に使っています。
生漆は紅茶のような色味の透明色ですが、手作業で何度も塗り重ねることで、深みのある色に仕上げています。また、漆で仕上げることで耐久性は飛躍的にあがり、より長く使っていただくことができます。こちらも富山県高岡にて木地加工と漆塗りの伝統工芸を継承する工房にて、1つ1つ仕上げます。
(漆塗りの仕上げは「総漆」タイプの商品のみです。「SS」タイプはのぞきます。)
真鍮は銅と亜鉛の合金で古くから美術品や寺院の装飾物・仏具、茶道具、金管楽器にも使われてきた素材です。温かみと落ち着きのある独特の質感でランプなどの内装品やモダンな小物などの用途にも人気があります。
ZAYUを手にとっていただくと意外にもずっしり重い、と感じていただけると思うのですが、これも真鍮の特徴です。大切な遺骨をしっかりとお包みする安定のよさも考慮しました。真鍮部分の切削、研磨は富山県高岡にて真鍮・錫の鋳造を行う老舗工場が手掛けています。
真鍮は様々な着色加工をして用いられることも多い金属ですが、ZAYUのラインナップ、青、緑、茶斑、黒斑はどれも「着色」というよりは「発色」と言ったほうがふさわしく、色を塗っているのではなく真鍮を人為的に腐食させることで生まれます。
様々な薬品、米ぬか(!)などを使い、高熱を加えることで化学変化が起き、奥深さのある美しい色が引き出されます。銀斑については真鍮に本物の銀をメッキして仕上げています。400年の高岡銅器の伝統を応用しながら新たな創意工夫に挑戦する工房の手によります。
ZAYUはすべてシンプルな形ですが、シンプルだからこそ寸分の狂いも許されない形でもあります。ズレの出ないよう1つ1つ丁寧にサイズをあわせています。外壺は、木材である上蓋部分と真鍮の容器部分とを組み合わせて使うわけですが、木材と金属という異素材の組み合わせというのが最も難しいところです。
気温や湿度などの条件で木材も真鍮も伸縮するわけですが、同じ気温・湿度でも、木材と真鍮は異なる伸縮度合いを示します。サイズをピッタリ合わせるためには全体の指揮を執るプロダクトデザイナー、木材の切削の職人、漆塗りの職人、真鍮の切削の職人、真鍮の着色加工の職人がそれぞれの経験と知識・技術を動員しつつコミュニケーションをはかって何度も何度も調整を重ねるという非常に骨の折れる過程を経ています。プロダクトデザイナーは、漆芸、大和絵を京都にて300年に渡り代々営む塗師が担当。
巾着は中壺を包むものですが簡素な袋に見えてしまわないよう、素材は京都の工場で染め上げられた16匁の、しなやかで光沢の美しいシルクを使用しています。非常に小さな袋ですが、裏地にも同様のシルク生地を使用し、しっかりと仕立てています。構造を複雑にすると小さい分、野暮ったくなりかねないので、素材も縫い方も見栄えを考慮して試作を重ねました。
しかもこの巾着袋が中壺と外壺の中間に位置するという構造上、サイズの加減も非常に重要ポイントになります。きつく作ると中壺を収納しにくくなりますし、ゆるくすると今度は外壺の蓋が閉まらなくなります。全体のバランスを調整しながら、最後まで妥協せずに仕上げました。京都・西陣の絹糸問屋にて製造されています。
中壺を収納する巾着袋、小さなパーツではありますが、それを結ぶ紐にもこだわりました。江戸時代から続くこちらも京都の老舗の「唐打」という組紐を使用しています。上品な風合いで伸縮のある組紐です。素材はもちろんシルク100%。よい紐を使うだけで巾着を結んだときの全体の印象がガラリとかわります。大切に心を込めて結ぶ、それもご供養であると考えます。